日本アルプスのシンボルといえばアルピニストなら圧倒的多数が「槍ヶ岳」というでしょう。播隆上人(ばんりゅうしょうにん)も、『日本アルプス登山と探検』を著して日本アルプスを世界に紹介したウエストンも、槍ヶ岳登頂を目指しました。そんな槍ヶ岳を池に映し、「逆さ槍ヶ岳」の絶景を得ることができるのが天狗池です。
池のある天狗原は別名「氷河公園」
北アルプスでももっともアルペン的な山容を誇るのが槍ヶ岳(3179.7m)から穂高岳(奥穂高岳3190m)にかけての槍・穂高連峰。槍ヶ岳から北穂高岳を目指す縦走路を歩くと、大喰岳(おおばみだけ/3101m)、中岳(3084m)、南岳(3032.9m)と続きます。中岳から南岳への途中の分岐点から槍沢側に下ると、横尾尾根沿いのハシゴや鎖場が続く断崖の急下降に。
これを下り、横尾のコル(コル=鞍部)から氷河地形となった天狗原に下ると、天狗池があります。
逆に槍沢から登ることもでき、2350m地点で槍ヶ岳登山道を右に見送り、中岳からの沢を巻くように登ると標高2500m地点に天狗池があります(槍沢の分岐から往復1時間30分)。
いずれにしろ、天狗池に到達するにはしっかりとした登山装備が必要となります。
例年、天狗池が姿を見せるのは雪渓が溶けるお盆以降
天狗池周辺は、天狗原が正しい呼び名ですが、通称「氷河公園」。天狗原自体は「天狗原カール」と呼ばれる圏谷地形(氷河の侵食作用によってできた広い椀状の谷)。南側の横尾尾根は、アレートと呼ばれる鋸歯状山稜(櫛形山稜)で、氷食によって削られたアルペン的な稜線です。
羊背岩(氷食作用によって上流側に丸みを帯びた研磨面と、下流側にごつごつした破断面を持つようになった基盤岩の突出)も観察することができます。
しかも天狗池は、槍沢氷食谷(U字谷、氷河谷=谷氷河や溢流氷河の侵食によって生じた谷)や、氷食尖峰(ホルン=氷食作用によってつくられたピラミッド型の鋭い岩峰)の槍ヶ岳と、日本アルプスを代表する氷河地形を見学するスポットにもなっています。
槍ヶ岳は、千丈沢・天上沢・槍沢・飛騨沢の4カールによって削られて誕生したホルンなのです。
とはいえ、注意したいのは天狗池の見物シーズン。
「天狗池は例年8月中旬頃まで雪渓で埋まってその姿を現しません。池の全容が現れ、槍ヶ岳が投影される様を見るためには9月に入ってからが確実です」(ベテラン登山者の解説)。
つまり、稜線が氷点以下になるような秋口がベストシーズン。山慣れた人と天狗池を目指すのがおすすめです。
南岳山頂近くにある南岳小屋は槍ヶ岳山荘グループの経営。例年7月初旬から10月中旬の営業です(なるべくなら事前に予約を)。
上高地→4時間30分→槍沢ロッヂ→5時間30分(氷河公園経由)→南岳小屋。
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