「氷河期の遺存種(いぞんしゅ)」とも称されるニホンライチョウ。そもそもライチョウ(学名:Lagopus muta)は、北半球北部に分布し、その亜種がニホンライチョウです。そのライチョウの生息地(繁殖地)のうち南限となるのが、南アルプス南部のイザルガ岳(2540m)です。
イザルガ岳北面のライチョウが、目下の世界南限

山好きの人でもイザルガ岳という山名にピンと来る人は少ないかもしれません。
南アルプスの深部、深田久弥の『日本百名山』にも選定される光岳(てかりだけ/2591.5m)の東側にそびえるのがイザルガ岳です。
光岳とイザルガ岳の鞍部には静岡県が所有し、川根本町が管理する「光小屋」(定員20名/全日予約制、夏のみ食事対応)も営業しています。
国の特別天然記念物で絶滅危惧種に指定のニホンライチョウは、標高2200m以上の高山、身を隠すことのできるハイマツ帯に生息しますが、イザルガ岳、光岳は、雪が比較的に少ない南アルプスも南部ということで山頂部がわずかに森林限界を超えて、ハイマツが茂る程度。
つまりはハイマツ帯の南限=ライチョウの南限ということに。
ライチョウにとっては過酷な環境で、ニホンジカなどが上ってくれば、生息環境が脅かされかねません。
平成9年から静岡ライチョウ研究会が調査を行なっているように、イザルガ岳、光岳は、静岡県(静岡市・川根本町)と長野県(飯田市)の県境。
登山者も少ないため、ライチョウの目撃例も少なくなっていますが、近年の温暖化でハイマツ帯も衰退傾向にあり、光岳ではすでに絶滅した可能性も。
そのため、イザルガ岳(イザルガ岳北斜面で巣が確認されたことがありました)が目下のところ、世界的な南限といわれていますが、いつ絶滅するのかすでに秒読みの段階に差し掛かっています。
高山帯に生息していなかったキツネ、テン、カラス(高山帯には本来はホシガラスのみ生息)の侵入、ライチョウを捕食するようになったことが最大の理由と推測されています。
シカとサルの群れがお花畑を食い荒らし、ライチョウの餌となる高山植物の減少、植層に大きな変化があったのも要因です。
平均気温が1度高くなると、森林限界が154 m上昇することがわかっていて、山頂だけが高山帯のイザルガ岳は、まさに風前の灯火の生息環境となっているのです。



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