戸隠連峰の中心、山岳信仰でも名高い戸隠山(1904m)。ノコギリ状の岩峰はまさに山岳修験には絶好の地だったでしょうが、この戸隠山に上るメインルートが、戸隠奥社〜八方睨(はっぽうにらみ/1900m)〜戸隠山。八方睨直前の岩尾根で立ちはだかる難所が、「蟻の塔渡り」(ありのとわたり)です。
「蟻の塔渡り」、「剣の刃渡り」と難所が連続!

登山道入口(登山計画書のポスト)は戸隠神社奥社社務所の横(入山の際は必ず提出を)。
戸隠山の山岳信仰は、神仏習合時代、地主神の九頭龍大権現(九頭龍大神)への信仰。
奥社脇にも九頭龍神社があるので、ぜひ参拝して登山の安全を祈願しましょう。
戸隠神社奥社社務所→「蟻の塔渡り」・「剣の刃渡り」→八方睨→戸隠山→九頭龍山→一不動→氷清水→戸隠牧場というコースが一般ルートですが、地元でも「『蟻の塔渡り』、『剣の刃渡り』と呼ばれる左右が切れ落ちた岩場があり、登山には相当の技量と体力を要しますのでご注意ください」と注意喚起し、上級コースとしています。
「蟻の塔渡り」、「剣の刃渡り」までにも胸突岩などの鎖場が連続。
スリルと緊張、体力消耗でへとへとになったところで、「蟻の塔渡り」を迎えるのです。
「蟻の塔渡り」入口には「自信がない場合は、勇気を持って引き返しましょう」と記され、実際に引き返す人も多いのだとか。
左右が切れ落ちた狭い尾根で、人が尾根伝いにアリが歩くようにへばりつくように登ることでその名があります。
登ることが危険なので、この道を下山に使う人はいません。

最後には「これが道なのか!」と驚く刃渡り状態に

「蟻の塔渡り」には、右側脇に巻き道(エスケープルート)もありますが、こちらも岩場のトラバースで難易度は変わりません。
「蟻の塔渡り」は、最初は幅がありますが、徐々に狭くなり、最後には「これが道なのか!」と驚くくらいの刃渡り状態に。
それが「剣の刃渡り」です。
鎖が付けられていますが、それに頼らず、三点確保で進むのが鉄則。
「剣の刃渡り」から先にも鎖場があるので、八方睨までは気が抜けないルートです。
2023年10月8日には東京都の男性が200mほど滑落、長野県警のヘリコプターが男性を救助し長野市内の病院へ搬送しましたが死亡が確認。
2025年7月28日には千葉県の71歳・女性が登山道から滑落、奇跡的に枝などにひっかかるも動くことができなくなり、ヘリコプターで救助、一命をとりとめています。
戸隠山は長野県が定めている登山のルートの技術的難易度では5段階中、上から2番目。
つまりは北アルプスの穂高連峰や、白馬・不帰キレットなどと同等のレベルが必要ということです。
標高が低いからと安易にハイキング気分で上るのは大きな事故を招くことに。
地元でも「なるべくなら、戸隠山の経験豊かな人、できれば山岳ガイド同行で」と呼びかけています。


一般登山道なのに超危険スポット! 戸隠山「蟻の塔渡り」とは!? | |
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