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プレスマンユニオン編集部
北斎が最晩年に北信濃・小布施を訪れたワケとは!?
長野県上高井郡小布施町、小布施町は長野県内でもっとも小さい自治体ですが、最晩年の北斎がこの地を訪れ、岩松院の天井絵、有名な祭屋台の『怒濤図』などの傑作を残しています。初めて小布施を訪れたのは天保13年(1842年)の秋。驚くかな、83歳のときのこと。なぜ北斎は、北信濃を訪れたのでしょう? そのワケとは!?
北斎は83歳のときに初めて小布施の土を踏んでいる!
北斎が初めて小布施を訪れたのは天保13年(1842年)の秋、83歳のとき。
北斎流の「80歳にして画業ますます進み、90歳にしてさらにその奥義を極め、100歳にて神妙なり、110歳にして一点一画にして生けるがごとくならん」という姿勢からすればまさに80歳にして画業ますます進んだ頃のこと。
北斎を招いたのは親交のあった小布施の儒学者・高井鴻山(たかいこうざん)。
高井家は当時、大名を凌ぐといわれた豪商だったのです。
江戸時代の後期、小布施は北国街道(ほっこくかいどう=谷街道)と千曲川の通船による交易で大いに栄えていました。
そうして栄えた交易商の筆頭が高井家で、高井鴻山は京や江戸に延べ16年も遊学、書や画、和漢の学問を学ぶうちに江戸で出会ったのが北斎だったのです。
31歳で小布施に戻った高井鴻山のもとには、江戸や京から多くの文人墨客が訪れ、鴻山の書斎は北信濃きっての文化サロンとなっていきました。
時代は、老中・水野忠邦が天保年間(1841年〜1843年)に行なった天保の改革(華美な祭礼や贅沢・奢侈はことごとく禁止、芝居小屋の郊外・浅草への移転、寄席の閉鎖、歌舞伎役者の処罰など)の最中。
息の詰まる江戸の生活を離れ、北信濃の小布施へ。
北斎は、鴻山のことを「旦那様」と、鴻山は北斎を「先生」と呼び合いましたが、まさに北斎にとって鴻山は、最後の一花を咲かせるパトロン的な存在だったのです。
北斎は2回目の小布施入りで東町祭屋台の天井画(『龍図』、『鳳凰図』)を描いています。
さらに翌年の3回目(86歳)の訪問では上町祭屋台の天井に『怒濤図』2面(『男浪図』、『女浪図』)を描き、4回目は88歳の折で、岩松院の天井に『鳳凰図』を描き上げています。
そのすべてが肉筆画で、2回目〜4回目の3度の小布施入りで描いた作品が「小布施の三大傑作」と呼ばれて、すべて現存しています。
小布施を訪れれば、岩松院の天井画のほかは、「北斎館」に展示され鑑賞が可能。
北斎館の常設展で展示される『女浪図』にはその片隅に小さなエンゼルが描かれていることにも注目を。
キリシタン禁制の幕末にエンゼルとはいかにも北斎らしい挑戦です。
『女浪図』にはインコ、リスなど西洋の鳥獣が、対する『男浪図』には孔雀、麒麟、獅子という「西洋と東洋の激突」が描かれていることから、これを「開国予測図」という人もいます。
アヘン戦争で清がイギリスに敗れたこと(1842年に南京条約が締結、香港がイギリスに割譲)、弘化元年(1844)、オランダ国王が親書をもって開国を奨め、さらに弘化3年(1846)、アメリカ東インド艦隊司令長官ビッドルが浦賀に来航したという幕末の情勢が絵にも反映したのだと推測できます。
小布施に残る北斎の肉筆画からは、幕末という時代背景をも感じ取ることができるのです。
北斎が最晩年に北信濃・小布施を訪れたワケとは!? |
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