天竜川

天竜川

諏訪湖の唯一の水の出口、長野県岡谷市の釜口水門を源流に、伊那谷を南下し、愛知・静岡県境を流れて静岡県浜松市と磐田市の境で遠州灘(太平洋)に注ぐ長大な河川が天竜川(てんりゅうがわ)。幹川流路延長は213kmで、日本第9位、流域面積5090平方キロは日本第12位の河川です。山間の急流部は電源開発にも使われてきました。

天竜川下りは、往時の通船を今に伝える!

通船の歴史を今に伝える天竜川の川下り

江戸時代初期の慶長11年(1607年)、京の豪商・角倉了以(すみのくらりょうい=高瀬川、保津川を私財を投じて開削)が、江戸幕府の命を受け、東大寺大仏殿改築に用いる木材の運搬のため、天竜川を浚渫(しゅんせつ)。
信濃国平出(長野県辰野町)から遠江国掛塚(静岡県磐田市)まで、筏流しで木材を搬送しています。
これが天竜川の木材輸送の始まり。
舟運は、寛永13年(1636年)、殿島〜河口で実験的に実施され(『熊谷家伝記』)、その後、高遠米などの運搬も行なわれ、急流で知られる富士川の船頭をスカウトしたりもして、徐々に拡充していきました。
三河(愛知県)と結んだ中馬街道(「塩の道」)の業者にとって舟運は死活問題だったので、対立もあって、幕府に通船の願いが出されたのは安永8年(1799年)のこと。
中馬街道の業者に配慮して、現在の「天竜舟下り」弁天港近くの新井に会所を設けて下流への通船を開始したのです。

その伝統を今に伝えるのが、2社が運航する天竜川の舟下りで、天竜川随一の景勝地・天竜峡を船で下るもの。
天竜川の急流を下る「天竜舟下り」(信南交通)は弁天港〜時又港(長野県飯田市/6km・所要35分)。
少し下流側で、絶景を堪能する「天竜ライン下り」(天龍ライン遊舟)は天龍峡温泉港〜唐笠港(長野県飯田市、泰阜村/10km・所要50分)。

「天竜舟下り」で下船する時又港は、往時には「丸文」などの廻船問屋、旅館、船宿が建ち並び、通船の拠点として賑わった港です。

伊那谷は、中央アルプス(木曽山脈)と伊那山地との間にあるため、そこを流れる天竜川は、「暴れ天竜」の異名で呼ばれるほど氾濫が多発していました。
とくに「未満水」(ひつじまんすい)と呼ばれる正徳5年(1715年)の氾濫は、土砂が川をせき止め、伊那谷が湖のようになったと伝えられています。

その氾濫を受け、江戸時代半ば、飯田藩主・掘親長(ほりちかなが)は、飯田城下の石工・中村惣兵衛(作事奉行)に堤防の建設を命じて下市田大川除堤(惣兵衛川除/現・長野県高森町下市田)を築いています。
高藤藩でも尾張から石工を招き、松村理兵衛忠欣・常邑・忠良の3代、58年を費やして理兵衛堤防(現・長野県中川村片桐田島)を築いて「暴れ天竜」に対抗しています。

天竜川は諏訪湖が水源ですが、源流(湖口)となる釜口水門(長野県岡谷市)は、昭和11年に竣工。
この釜口水門も諏訪盆地の洪水対策で設置されたもの。

天竜川源流の諏訪湖・釜口水門

河口部には自然地形、砂州が残されている

佐久間ダムと佐久間湖

電源開発は、木曽川と同様に電力王といわれた福沢桃介(福沢諭吉の養子)の手により昭和10年、天竜川本流に泰阜ダム(やすおかだむ/現・長野県泰阜村、阿南町)が築かれたのが始まり。
昭和11年に平岡ダム(現・長野県天龍村)が建設され、本流にダムが築かれたことで木材の筏流しが廃絶されています。
昭和31年に天竜川本流に築かれた佐久間ダム(愛知県豊根村、静岡県浜松市天竜区)は、堤高155m、当時世界で10番目に高いダムで、日本の復興の象徴的な存在になりました(現在でも日本第9位の堤高、第8位の総貯水容量を誇っています)。
人造湖は佐久間湖と命名され、ダム湖百選にも選定されています。

天竜川河口は、自然地形が比較的に残され、磐田市側には竜洋海洋公園が整備され、オートキャンプも可能です。
築山の竜洋富士からは遠州灘を一望に(下山は巨大すべり台の利用も)。
隣接して磐田ウィンドファーム(コスモエコパワー)の巨大な風車が並んでいます。

河口の突端東側部分の砂州上には掛塚灯台(かけづかとうだい)が築かれていますが、明治30年初点灯という歴史ある灯台です(海岸浸食で平成14年に現在地に移設)。

天竜川河口の掛塚灯台

天竜川源流・釜口水門|長野県岡谷市

理兵衛堤防|長野県中川村

佐久間ダム|愛知県豊根村・静岡県浜松市天竜区

天竜川河口・掛塚灯台|静岡県浜松市南区、磐田市

天竜川
名称 天竜川/てんりゅうがわ
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