トンネルの貫通、高架の完成など鉄道の建設工事が進みながら、開通することなく廃線となった線を未成線(みせいせん)と呼んでいます。長野県飯田市には、恵那山・富士見台の直下を神坂トンネルで抜け、飯田と中津川を結び、名古屋への短絡ルート完成を夢見た中津川線(未成線)の廃線跡が残されています。
神坂トンネルの水抜き工事中に温泉が湧出!

国鉄(現・JRグループ)が、飯田線・飯田駅(長野県飯田市)と中央本線・中津川駅(岐阜県中津川市)を結ぶ計画で、昭和38年8月に調査が開始、昭和43年5月9日に起工、昭和48年には掘削途中に温泉が湧出(現在の昼神温泉)、その後、昭和55年に建設半ばで工事が凍結されたのが、中津川線です。
当時、飯田線・飯田駅と名古屋駅は飯田線、東海道本線・豊橋駅経由の急行「伊那」が4時間ほどで結んでいましたが、もし中津川線が開通すれば、飯田駅〜名古屋駅は2時間を切るという大幅な短縮が見込まれていました。
工事中の昭和50年8月23日、中央自動車道の恵那山トンネル開通し、高速バスや自動車輸送で伊那谷と中津川、名古屋方面が直結したこともあって、鉄道開通の重要性も薄れ、平成元年、建設用地が日本国有鉄道清算事業団に譲渡され、事実上の廃線、つまりは未成線となったもの。
完成時には飯田駅〜伊那中村駅〜伊那山本駅〜阿智駅〜昼神駅〜(神坂トンネル/夜烏山信号場、富士見台信号場を設置)〜神坂駅〜美濃落合駅〜中津川駅と設置される駅まで決まり、一部では工事も進んでいました。
昼神温泉は、恵那山中を貫く神坂トンネルの飯田寄り(昼神地区)で水抜きボーリング工事最中に温泉が湧出、これが温泉街へと発展したもの。
長野県・伊那谷側の伊那中村駅~伊那山本駅間では全長1.5kmの二ツ山トンネルを含む工事がほぼ完成(昭和44年6月、二ツ山トンネル完成)、二ツ山トンネルの伊那中村駅寄りの部分の廃線跡はしっかりと現存しています。
二ツ山トンネルの伊那山本駅寄りの路盤は、現在、国道153号・256号のバイパスとして再整備されています。
この幻の鉄道・中津川線のルートは近い将来、リニア中央新幹線が開通し(飯田市内に新駅設置)、往時の夢が実現することになりそうです。
ただし、飯田市では名古屋が近くなるよりも、東京への利便性アップに注目が集まる状況で、その点でもすでに中津川線計画時とは事情が大きく異なるようです。
ちなみに、中津川線の昼神駅予定地には「国民年金保養センターひるがみ」(現・阿智の里ひるがみ)、神坂駅予定地には「中津川温泉クアリゾート湯舟沢」が建設されています。

幻の鉄道・中津川線、「未完成の廃線跡」が現存! 工事の途中で昼神温泉が湧出 | |
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