クレーター (crater) とは、天体衝突などによって作られる地形のこと。
隕石や小惑星がドカーンと地球に衝突し、地表に生じた巨大な凹みがクレーターです。
地球上で現在確認・公認されている衝突クレーターは直径10mから160kmのもので182個。世界最大の隕石クレーターは、フレデフォート・ドーム(南アフリカ共和国フリーステイト州)で世界自然遺産にも登録されています。その衝突の衝撃は、広島型原爆の58億倍というすさまじいもので、地球史の3大隕石衝突に数えられています。
日本にも隕石が激突した痕跡が!
では、日本に隕石クレーターがあるのかといえば、火山島でしかも水による浸食が盛んな日本列島ではクレーターの痕跡が残りづらいという致命的な欠点があります。高松市仏生の高松琴平電気鉄道琴平線・仏生山駅一帯に広がる緩やかな凹地は、「高松クレーター」と呼ばれていましたが、1400万年前のカルデラ跡だと判明。
奄美大島(鹿児島県)・龍郷町の赤尾木湾は「奄美クレーター」とする説もありますが、周囲の地質などから隕石孔を否定する説もあり定かでありません。
それでも唯一、隕石クレーターだと実証されているのが、長野県飯田市の南アルプス山中にある御池山クレーター(「御池山隕石クレーター」)です。
クレーターのある南アルプス南部の山中には、日本を代表する秘境の「下栗の里」、南アルプス南部の山々を眺望する「しらびそ高原」があります。その両者を結ぶ南アルプスエコーラインがちょうどクレーターの西壁に沿って走っているので、ドライブがてらに見学が可能です(ただし幅員が狭いので運転は慎重に。初心者ドライバーの入山はおすすめできません)。
南アルプスエコーラインを走ると、崩壊したクレーターの壁面、衝撃で変成したチャートの巨岩、衝撃で割れ目の入った地層などを観察できます。また御池山山頂の北東・しらびそ高原寄りのエコーライン沿いには案内板とクレーターを一望する展望スポットも用意されています。
しらびそ高原を基地にクレーターを見学
地元の話では「しらびそ高原を訪れるハイカーのなかに、まるい凹地はクレーターなのでは、という話題が出ていた」(旧上村関係者の話)とのこと。これはクレーターに違いないと確信したのは、中央構造線の研究をライフワークにする地元の教頭先生。飯田市立竜丘小学校の教頭だった坂本正夫先生(現在は飯田市武術博物館専門研究員)は、クレーターの岩石を採取し、岡山理科大学に鑑定依頼。
ついに平成15年9月、国立極地研究所で開催された国際シンポジウムで、坂本正夫さんと岡山理科大学の研究チームらによる「中部日本、御池山クレーターからの面状微細変形組織」と題する論文が発表されたのです。平成22年には国際誌『隕石と惑星の科学』に論文が掲載され、国際的な隕石クレーターとして公表されました。まだ隕石そのものは見つかっていませんが、「PDFs」と呼ばれる衝撃石英が発見されるなど、隕石クレーターであることは確定しています。
御池山隕石クレーターは直径900m。2~3万年前に直径45mほどの小惑星(隕石のかたまり)が御池山南東斜面に衝突した結果誕生した巨大な凹部。現在、かなり浸食を受けながらも御池山の尾根を中心にクレーター地形の40割が残っています。
南アルプスジオパークのジオサイトにもなっており、公共の宿(上村振興公社経営)「ハイランドしらびそ」内に、御池山隕石クレーターに関する常設展示もあるので、ここを基地にして見学するのがおすすめでしょう。
御池山隕石クレーターに検出された 負の重力異常 – 日本惑星科学会