日本最高所の湖といえば中禅寺湖(日光市)・標高1269mというのが定説ですが、南佐久郡佐久穂町、北八ヶ岳に眠る白駒池が「標高2100m以上の湖としては日本最大の天然湖」(佐久穂町観光協会)、広域観光を担うちの観光まちづくり推進機構も「標高2115m、日本最高所にある神秘的な湖」とPRしています。
実は湖、池の違いには定義がない!
北八ヶ岳の苔むした原生林に囲まれる白駒池は、周囲1.35km、最大水深8.6m、水面の標高は2115mなので、もし湖であれば、文句なしに日本最高所の湖ということに。
成因は堰止湖で、白駒峰の噴火で大石川(信濃川水系)がせき止められて誕生したもの。
国土地理院(国土交通省)は、Q&Aで「湖、沼、池の違いは何ですか?」の回答としてスイスの湖沼学者フォーレル(François-Alphonse Forel/1841年〜1912年)の分析を紹介し、
- 湖:水深が大きく、植物は湖岸に限られ、中央に深い所には沈水植物を見ないもの
- 沼:湖より浅く、最深部まで沈水植物が繁茂するもの.
- 池:通常、湖や沼の小さなものをいい、とくに人工的に作ったもの
と区分しているので、とくに厳密な決まりはないようです。
環境省は湖沼の区分を、
- 「みずうみ」:四面を陸地でかこまれて中に水をたたえたもの
池・沼などより大きく中央部に沿岸植物の侵入を許さない深度(5m~10m以上) を持つもの - 「ぬま」:一般に、深さ5m以下で底は泥ぶかく、クロモ・フサモなどの沈水沿岸植物が生えている湖沼をいう
湖とは厳密には区別されていない
としていて、湖沼一覧表の長野県には、白樺湖の次に白駒池が記載されています。
白駒池は湖沼のなかでも水深が8.5mと「中央部に沿岸植物の侵入を許さない深度」が確保されているため沼ではなく、湖といえるかもしれません。
ただし、環境省には「池」という区分がないため、水深が5m以上あればすべて湖に該当することに。
標高2000m以上で、水深5m以上という定義を考えると立山黒部アルペンルート途中の室堂平、標高2405mの高所に位置する火口湖・ミクリガ池も、水深は15mあるので沼ではなく湖ということになりますが、池の周囲は630mしかないので、湖というよりも池という感じです。
つまりは定義がないので、「衆目の一致するところ」が大切になり、大きくなければ湖とは呼べない派としては、当然、中禅寺湖(周囲25km、最大水深163m)でしょうし、小さくても水深があり、湖の雰囲気があればということなら、白駒池もOKとなります。
「標高2100m以上の湖としては日本最大の天然湖」
「標高2115m、日本最高所にある神秘的な湖」
という微妙な言い回しはそうした点を配慮して、まさに「言い得て妙」なる表現といえるのかもしれません。
八ヶ岳の秘湖・白駒池は日本最高所の湖!? | |
名称 | 白駒池/しらこまいけ |
所在地 | 長野県南佐久郡佐久穂町八郡・小海町 |
電車・バスで | JR八千穂駅から千曲バス麦草峠行きで1時間、白駒池入口下車、徒歩15分 |
ドライブで | 中央縦貫道高千穂高原ICから約21km。または、中央自動車道諏訪ICから約32km |
駐車場 | 200台/有料 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |