小諸にある布引山釈尊寺。布引観音と通称されるのは、有名な「牛に引かれて善光寺参り」という逸話のルーツだから。善光寺との結びつきの強い釈尊寺(布引観音)ですが、京都の清水寺同様に懸崖造り(けんがいづくり=崖造り)の観音堂が山中に建っています。駐車場から山上の観音堂への道は巨石あり、洞窟あり、滝もと変化に富んでいます。
駐車場から険しい山道を15分登れば観音堂だ
千曲川沿いの山麓駐車場から階段状となった参道を登りつめること15分ほどで、崖にへばりつくように建てられた観音堂を見上げる場所に。
さすがに天台宗の山岳寺院だけに、修行僧が行場とした密教(台密)の聖地の凛(りん)とした雰囲気が漂っています。
新緑、紅葉シーズンならピクニックがてら参詣するのにも絶好ですし、運動不足の人には体力チェックにもなりそうです。
観音堂へ登る山道の途中には「善光寺に通じる洞窟」もあり、かつて善光寺で火災があった際に、洞窟から煙が出たという言い伝えがあります。また牛岩は、巨岩の壁になんとなく牛が浮かんでいるというもの。時期によっては断崖から滝が落ちる場所もあって深山の趣すら漂います。
ひとしきり登りが続くと山門があり、平坦となって寺務所前を通ると、今度は手掘りのトンネルを抜けて観音堂に出るという仕組み。
観音堂という名前は観音様を安置するお堂だからですが、雰囲気は舞台か展望台のような感じです。
牛は聖観音の化身だったというお話
観音堂内部の観音堂宮殿(かんのんどうくうでん=仏殿形の厨子)は正嘉2年(1258年)の造立で国の重要文化財。白山社社殿は県宝に指定されています。
この観音堂に安置されるのが、牛に化身して、強欲な婆さまを善光寺に連れていき改悛させたという聖観世音菩薩(布引観音)というわけなのです。
寺伝によれば、奈良時代の神亀元年(724年)に行基が開山したという古刹で、安置される聖観世音菩薩は聖徳太子の自刻とか。
「牛に引かれて善光寺参り」は、故事ことわざ辞典に掲載されるような諺(ことわざ)のひとつにもなっています。
この有名な説話は、信濃の国小県郡(現在の長野県上田市・東御市・小諸市周辺)に住む信心のない老婆が、さらしていた布を角にかけて走っていく牛を追いかけ、ついに善光寺に至り、のちに厚く信仰したという話。
これが「思ってもいなかったことや他人の誘いによって、よいほうに導かれること」を表わす諺に転じたというわけです。
最近ではアニメ『あの夏で待ってる』の舞台にもなって若い人にも注目のスポットになっています(夜の肝試しシーンに登場)。
布引観音(釈尊寺) | |
名称 | 布引観音(釈尊寺)/ぬのびきかんのん(しゃくそんじ) |
所在地 | 長野県小諸市大久保2250 |
電車・バスで | JR・しなの鉄道小諸駅からタクシーで7分で駐車場、参道入口から徒歩15分 |
ドライブで | 上信越自動車道小諸ICから約6km、参道入口から徒歩15分 |
駐車場 | 20台/無料 |
問い合わせ | 小諸市役所商工観光課 TEL:0267-22-1700/FAX:0267-23-8766 |
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |