岩に穴がふたつ開いていることでメガネ岩、眼鏡岩と称される岩は、全国にありますが、おもに海岸の波蝕で誕生したもの。日本アルプスの風雪食で生まれたメガネ岩は、実は1ヶ所だけ。それが北アルプス・燕岳(つばくろだけ/2763.0m、長野県安曇野市・大町市)の山頂近くにあるメガネ岩です。
人気の山小屋「燕山荘」に泊まって奇岩ウォッチングを
北アルプスの燕岳は、燕岳〜槍ヶ岳の縦走ルートが、「表銀座」と通称されるアルプス入門コースで、燕岳には設備の整った山小屋「燕山荘」(えんざんそう)もあって、人気があります。
燕岳は、山全体が花崗岩で、山上の森林限界よりも上部は花崗岩と花崗岩の風化した砂礫でなる海岸のような不思議な光景。
しかも夏場には「高山植物の女王」コマクサが砂礫に花を咲かせ、可憐。
槍ヶ岳を眺望するビューポイントにもなっています。
燕岳山頂一帯には花崗岩が風化した奇岩が数多くありますが、燕山荘のスタッフもイチオシというのが、このメガネ岩です。
メガネの中から槍ヶ岳を望むことができ、さらに槍ヶ岳を遠景にしての記念撮影も可能です。
燕岳にはイルカ岩という奇岩もあって、メガネ岩、イルカ岩が人気TOP2。
ゴリラ岩、ライオン岩という岩もあるので、ぜひ探してみてください。
ちなみに、この燕岳、日本アルプスの登山入門コースとして、戦前から人気があり、戦時下の昭和18年に発行された『初等科国語七』(国民学校初等科の教科書)にも『燕岳に登る』という紀行文が掲載されています。
「やがてそこへ登り着いたぼくらは、何といふすばらしい景色を、西の方に見渡したことであらう。左端の穂高に續いて、槍岳が、それこそ天を突く槍の穂先のやうに突き立つてゐる」
「とうとう、燕の絶頂が來た。それは、大空の一角にそそり立つ御影石の岩塊である。そこは、十人とは乘れないほどせまかつた。今こそ、二千七百六十三メートルの最高點に立つたのである。さつきの槍岳が、『ここまでお出で。』といふやうに、しかしいかにも嚴然とそびえてゐる。」
軍港主義教育の真っ只中、のどかな紀行文が続いていますが、それだけ、雲上の別世界が実感できる燕岳が戦前から注目の山だったことがよくわかります(同様に白馬岳の大雪渓ルートなども人気の登山道でした)。
日本最高所のメガネ岩が北アルプスに! | |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |