河童橋と大正池を結ぶ、上高地のメイン散策路が上高地自然研究路。その途中にある、穂高連峰眺望の絶景の池が田代池です。「田代」とは水田のこと、水田のような湿原という意味ですが、徐々に堆積が進み湿原化しています。そのため周辺には田代湿原が広がっており、木道で探勝。
ウォルター・ウェストンも離日直前に訪れた田代池
『日本アルプス登山と探検』(原題:Mountaineering and Exploration in the Japanese Alps)を著し、日本アルプスを欧米に紹介したウォルター・ウェストン(Walter Weston)は、3度来日しています。
最後の来日で、故国イギリスに帰る前年(大正3年)、上高地を訪れ、別れる日の最後にわざわざ田代池を訪問。
著書にはこんな言葉が記されています。
「早朝、すがすがしく澄み切ったなかを、私たちはしょんぼりと梓川谷をくだっていき、人影のない田代の池を通りすぎた。鏡のような沼面は穂高の灰色の断崖と輝く雪を静かに映していた」。
「5月の新緑、初夏のニッコウキスゲ、10月の黄葉、晩秋の霧氷を狙うカメラマンが多い場所。田代池は全面結氷しないため水温の方が高い季節の早朝は、周辺の木々は霧氷に包まれて幻想的な風景が出現します」(上高地観光旅館組合)とのこと。
上高地を訪れるならら、ぜひ万難を排して、上高地内の旅館・ホテルに宿泊を。田代池探勝も朝イチがおすすめです。
氷河のU字谷が1500mも埋まり、その上に池と湿原が誕生!
穂高連峰とは反対側、上高地の東側にそびえる霞沢岳(2645.8m)、六百山(2450.1m)の西斜面から流れてた土砂の複合扇状地にあるのが田代湿原と田代池。
上高地自体は氷河地形の巨大なU字谷ですが、その谷底が2万6000年の間に深さ1500mに渡って梓川上流から、さらに霞沢岳、六百山から流れ込んで堆積し、地層が誕生し、その上に田代湿原が誕生したのです。
上高地の堆積平野の中でも最も深く堆積が進んでいる地域で、かつての梓川の流れがどこにあったのかの痕跡もありません。
霞沢岳、六百山の八右衛門沢、上千丈沢という、田代湿原背後の頂から流れてくる大量の土砂で、梓川の流路が穂高連峰側に押しやられてしまっているからです。
湿原に堆積した泥炭層を分析するとその間の気候変動などの歴史が判明するそうで、田代湿原の泥炭もその研究対象となっています。
田代池 | |
名称 | 田代池/たしろいけ |
所在地 | 長野県松本市安曇上高地 |
関連HP | 上高地観光旅館組合公式ホームページ |
電車・バスで | 松本電鉄上高地線新島々駅からアルピコバス上高地バスターミナル行き52分、大正池下車、徒歩15分 |
ドライブで | 長野自動車道松本ICから約33kmで沢渡地区駐車場。路線バス・タクシーで上高地へ(マイカー規制実施中)。大正池下車、徒歩15分 |
駐車場 | 沢渡地区駐車場(2156台/有料) |
問い合わせ | 松本市山岳観光課 TEL:0263-94-2307/FAX:0263-94-2567 |
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